ムセイオン ～博物館の物語～
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Ⅵ．マダム・ホワイト
（一）
「頭の中が真っ白になる」とは、あんな状態を言うのだろうか。僕はしばらく、思考が先に進まないままで固まっていた。
この一か月間、僕は誰も知らないダイヤモンドの鉱脈を掘り当てたような気分だった。もちろん、浮かれていてはいけないのはわかっていたし、成功に向けて努力をしていたつもりだったのだが、結果として大きな幸運を逃してしまった。
今になって考えれば、僕のような者が手を出せることではなかったのかもしれない。それでも、僕は何か運命のようなものを感じて、やれる気になっていた。そして、そこには確かな手ごたえと、何にも代えがたい喜びがあった。
こうなったのは、僕が選択を重ねてきた結果だ。最初から違う選択をしていれば、全く違う状況になっていたのだろう。しかし、本当にその方が良かったのかどうかもよくわからない。
ただ、何らかの代替策を考えなければならない、ということだけは確実だった。