ムセイオン ～博物館の物語～
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Ⅵ．マダム・ホワイト
（三）
それから１週間、僕はわずかな期待に背中を押され、可能な限りの有給休暇を取得して、販促品に使う絵を探し回った。行けそうな展覧会には全部行った。名前が売れていない作家でも才能を感じさせる絵はたくさんあったが、注目されている天野麗夢と比べたら、アピール力が足りなかった。有名な作家の作品で販促品にふさわしいものはいくつか見つかったが、問い合わせてみると、どれも使用料が予算を超えていた。そして気ばかり焦る中で空しく時間は過ぎ、美術の素養のない自分にとって、これは無理な取り組みだったことを思い知った。
そもそも、僕は本当に天野麗夢の才能を見抜いていたのだろうか。偶然遭遇した彼女の、妖艶な見た目とは少しギャップがある誠実そうな態度に好感を抱いて、無意識に高く評価していただけではないのか。
違う。
僕は確かに、彼女の絵には見た人を幸せにする力が宿っていることを感じていた。だから、より多くの人に彼女の絵を知ってもらいたいと思ってこの仕事を進めてきた。それは決して間違っていなかったと思う。
ただ一つ運が悪かったのは、僕よりわずかに早く行動を起こした人が、よりにもよって同業者だったということだ。
複製画の製作会社に原画を提供する期限がせまっていた。